はじめに
妊娠率は治療先を検討する上で大切な指標の一つですが、年齢や体質、治療方針などによって結果は大きく異なります。当院では、数字だけでなく、患者様一人ひとりに合った最適な治療を重視しています。このページでは当院の治療成績と、治療における私たちの考え方をご紹介いたします。
1. 凍結融解胚移植の累積HCG陽性率
2012年7月〜2024年12月
※HCG妊娠率=HCG5以上の周期数/移植周期数
※新鮮胚移植、新鮮胚+凍結融解胚の複数胚移植は含まれていない、凍結融解胚移植のみ
2. 凍結融解胚移植の累積臨床妊娠率
2012年7月〜2024年12月
※臨床妊娠率=胎嚢確認できた周期数(GS+)/移植周期数
※新鮮胚移植、新鮮胚+凍結融解胚の複数胚移植は含まれていない、凍結融解胚移植のみ
3. 凍結融解胚移植時の平均年齢
2012年7月〜2024年12月
4. 高齢の方の治療におけるポイント
当院では、年齢の高い患者様に対して、妊娠の可能性を最大限高めるために、以下のような治療方針を重視しています。高齢になると卵子や胚が受けるストレスの影響が大きくなるため、できる限りその負担を減らす治療設計が重要です。
① 可能な限り「ふりかけ方式(体外受精)」を選択します
顕微授精(ICSI)に比べ、体外受精(IVF)の方が妊娠率・出産率が高くなる傾向があります。顕微授精は受精障害や男性因子に対して有効な治療ですが、そういった要因がなければ基本的にはふりかけ方式を推奨しています。
② 胚移植は「新鮮胚移植」を推奨しています
凍結胚移植よりも、新鮮胚移植の方が胚にとってのストレスが少ないと考えられています。そのため、条件が整っている場合は新鮮胚での移植を推奨しています。
③ 「初期胚」での移植を行うことを検討します
高齢になると採卵数が少なくなり、胚盤胞まで育つ胚が得られにくくなります。胚盤胞まで育たない場合、移植自体ができなくなることもあります。
また、高齢の方の胚盤胞は凍結に対して弱く、融解後に収縮してしまい、孵化しにくい傾向があることもわかっています。
さらに、長期間の培養そのものが胚にストレスとなり、胚盤胞培養が合わないケースもあります。胚を育てる環境としては、どれだけ整備された培養庫であっても、やはり母体内の環境に勝るものはありません。
そのため、胚盤胞で結果が出づらい高齢の方には、初期胚での移植をおすすめする場合があります。
④ 少しでも若いうちに「凍結胚を確保する」ことも重要です
卵胞の発育状況に応じて、ダブルOPU(2回に分けて採卵)やDuo Stim(同一周期内で2回採卵する方法)を取り入れることで、短期間での胚の確保が可能となります。将来的な治療の選択肢を広げるためにも、早めの胚凍結は有効です。
⑤ 「タイムラプス」で受精の経過を詳細に観察します
正常な受精が起きているかどうかは、妊娠に直結する大切な要素です。異常受精の胚を培養しても妊娠することはありません。当院ではタイムラプス機能付きの培養器を導入し、受精から分割の過程を連続観察することで、異常受精を見逃さず、良好な胚の選別に役立てています。
⑥ 顕微授精時には「ピエゾICSI」を採用しています
通常の顕微授精では卵子に強い物理的刺激が加わりますが、ピエゾICSIではその刺激を大幅に軽減することが可能です。当院ではすべての顕微授精においてピエゾICSIを採用し、卵子への負担を最小限に抑えています。
⑦ 胚を「培養庫の外へ出さずに管理」しています
胚は非常にデリケートであり、培養庫の外に出すだけでもストレスとなります。当院ではタイムラプス機能付き培養庫(エンブリオスコープ)を使用し、胚を外に出すことなく観察・管理を行っています。
若年の方では、ある程度のストレスにも卵子が対応できることがありますが、高齢になると小さな負担が妊娠率に大きく影響してきます。そのため、当院では「卵子や胚への負担をいかに減らすか」を重視し、年齢やご状況に応じた最適な治療方法をご提案しています。
5. 再生医療治療実績
当院では子宮内膜が十分な厚さにならない方や卵巣機能が低下した方を対象として、自己血小板由来成分濃縮物(PFC-FD™)を用いた治療を行っております。
当院は、2025年現在日本で最もPFC-FD™治療の実施件数が多く、3年連続PFC-FD™の製剤加工を受託しているセルソース株式会社のダイヤモンドパートナーに認定されております。
PFC-FD™製剤作製・注入 実施件数
| 作製 | 子宮内注入 | 卵巣内注入 | |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 116 | 142 | 202 |
| 2024年 | 78 | 101 | 90 |
| 2025年 | 132 | 76 | 106 |
45歳以上で生まれた方に共通する刺激方法、治療戦略
PFC-FD