クラミジアについて
クラミジア感染症と聞いても良く分からない、というのが一般の方の受け取り方だと思います。何となく性交渉でうつる事があり気を付けないといけない、そういう程度だと思います。
しかしこの病気は不妊症にとって非常に厄介な病気です。
女性側の不妊の原因の3割は卵管因子です。そのうちの60~70%はクラミジア感染症が原因となっています。残りは子宮内膜症が原因です。
クラミジアが子宮頚管の細胞へ感染して子宮頚管炎をおこし、その後子宮内膜に感染して子宮内膜炎となり、その後それが卵管へと上行性に広がり卵管炎から卵管不妊につながります。さらに進行すると骨盤腹膜炎になったり肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)や卵巣炎を引き起こします。
以下について順に説明します。
- 自覚症状が出ない
- 不妊症の原因になる
- 子宮外妊娠の原因になる
- 妊娠後子供への感染の恐れがある
自覚症状が出ない
男性は5割程度は症状が出るのと比較し、女性がクラミジアに感染性しても2割くらいの人しか症状が出ません。その症状もおりものが増えるとかその程度です。そのため病院へ行かないので知らないうちにどんどん悪化してしまいます。卵管へ炎症を起こし、その後骨盤腹膜炎、そして肝臓周囲への炎症という風に広がっていきます。
クラミジアは男女間でお互いに感染させるいわゆる「ピンポン感染」があるため、両者の治療を同時に行うことが重要です。
不妊症の原因になる
卵管周囲癒着、卵巣周囲癒着、卵管内癒着、卵管水腫 等卵管性の不妊につながります。これは非常に厄介な癒着で自然に治る事はありません。また抗生剤を内服してもクラミジア感染は治癒しますが、できてしまった癒着は抗生剤では治癒しません。腹腔鏡下に癒着剥離術をする必要があります。
子宮外妊娠の原因になる
卵管内に癒着が出来るため受精卵が卵管内に着床してしまい子宮外妊娠を起こす率が高くなります。子宮外妊娠の約3割がクラミジアに感染しているというデーターがあります。クラミジア感染は子宮外妊娠の最大のリスク因子になります。
体外受精は卵管を使用しないで妊娠できますが、クラミジア感染の既往がある場合は子宮外妊娠のリスクが高いため胚盤胞移植を行いそのリスクを減らしていきます。
妊娠後子供への感染の恐れがある[新生児クラミジア感染症]
新生児 結膜炎
- 母子感染例の25~50%に発症
- 生後5~10日に発症
新生児肺炎
- 母子感染例の10~20%に発症
- 生後1~3カ月に発症
- 発熱せず、咳が主症状
- 結膜炎を伴うことが多い
また絨毛膜羊膜炎をおこし流産、早産の原因にもなります。
- クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis, CT)とは
- 主に目と性器に感染するクラミジアの1種です。ウイルスよりも少し大きいもので、直径約300nmの球形です。細胞内でのみ増殖できる細胞偏性寄生性細菌です。
クラミジア検査について
検査方法
抗原検査と抗体検査の2通りがあります。細菌やウイルスが体内へ侵入すると抗体を作ります。つまりクラミジアの抗体があるという事は過去に感染した既往がある事を示しています。現在感染しているかどうかは抗体検査ではわからない事があるので実際の抗原検査を行います。
不妊症の診断においては抗体検査の方が過去の事までわかるのでより有用と言えます。現在感染していなくても過去に感染の既往があれば癒着が出来ている可能性が高いという事です。
抗原検査
内診して子宮頚管の粘液を採取して検査します。これが陽性の場合は現在クラミジアに感染している事を示します。抗原検査法として蛍光抗体法、免疫学的検査法、遺伝子診断法の3通りがあります。
抗体検査
検査はIgAとIgG、2種類の抗体を測定し、感染している可能性を判定しています。検査結果から以下の様に考えてよいと思います。
- IgA(-) IgG(-) クラミジア感染の心配はありません。
- IgA(+) IgG(-) クラミジアにごく最近感染した可能性があります。
- IgA(-) IgG(+) 過去にクラミジアに感染した事があります。
- IgA(+) IgG(+) クラミジアに感染した既往があります。
クラミジアの治療
- ジスロマック:1日1000mgを1回で内服
- クラリス、クラリシッド:1日200mg×2 7日間
以上で完治します。1日で治癒するジスロマックが簡便だと思います。パートナーにも同時に投与します。治癒されるまで性交は控えます。