シート法について
シート法は、胚盤胞移植の3日前に培養液を子宮内に入れ、あとは予定通り胚盤胞移植を行うという方法です。これにより妊娠率がかなり上がる可能性があるとのことです。
以下シート法について、その理論を説明します。
クロストークとは
シート法にはクロストークという概念がポイントとなっています。
「着床期の胚と子宮内膜はシグナル交換(クロストーク)をしており、胚は着床に向けて子宮内膜の局所環境を修飾している」という基礎研究の概念のことです。
もう少し詳しく説明すると以下のようになります。
「胚培養液上清には子宮内膜胚受容能促進に関する胚由来因子が存在する事が確認されている。そこで胚培養液上清を子宮腔内に注入する事により子宮内膜が刺激を受け、胚受容に適した環境に修飾される可能性があると考え、胚盤胞移植に先立ち、胚培養液上清を子宮腔内に注入する方法を考案しこれをSEET法と命名している。最初に胚培養液上清を子宮に注入する事により、培養液中の胚由来因子により子宮内膜の分化誘導の促進が期待でき、かつ胚盤胞1個の移植に制限する事が出来るため、二段階移植と比べ多胎のリスクを軽減できるメリットがある。」
具体的な方法
- 採卵周期に胚盤胞を凍結保存する。
- 同周期にその培養液(胚盤胞まで培養したもの)を凍結保存する。液量は20~30μℓ。
- ホルモンコントロール周期の17日目に凍結していた培養液を融解し、20μℓをカテーテルで子宮底から1㎝離れたところに注入する。
- 引き続き20日目に胚盤胞を移植する。
成績の比較
シート法において有意に高い事がわかりました。
- 妊娠率はシート法で87%
- コントロール群で48%
シート法が優れている理由
「胚盤胞移植とシート法を比較した場合その相違点としてクロストークの差があげられる。つまり胚盤胞移植では胚盤胞が移植後に初めてクロストークが開始するため、子宮内膜の着床準備の遅れにより着床不全が生じている、または着床遅延が起きている可能性がある。シート法では培養液注入時よりクロストークが開始するため適時着床が成立し、胚盤胞移植と比較し着床時期が早くなっている可能性がある。」
シート法は二段階移植の欠点である「双胎のリスク」をなくして、胚から出る因子により内膜の状態を良くしています。特に過去に3回以上治療を受けても妊娠出来なかった方でもシート法により妊娠率が上がるとのことです。